要約

• オンチェーンエコシステムの分岐が加速しています。Solanaは高頻度インタラクション領域でのリーダーシップを維持し、Ethereumは高付加価値チェーンとしての地位を確立。資本フローは主要ネットワークに一層集中し、「勝者独占」構造が形成されつつあります。新興チェーンは強い成長を示す一方、一部のサイドチェーンやL2は資本流出の圧力下にあります。
• Ethereumは20億ドル超の純資本流入および価格・機関配分の過去最高記録によって、引き続き主要パブリックチェーンの座を維持。新興チェーンが資本を呼び込み急速に拡大する一方、Polygonなどのサイドチェーンは大規模な流出に見舞われ、「勝者独占」市場構造がさらに強まっています。
• Bitcoinは12万4,000ドルの高値到達後、資本流入が鈍化しましたが、売り圧力は低くコストベースのサポートも強固です。未実現損失も低水準で推移しており、現状の押し目は一時的な調整であり、トレンドの反転ではない可能性が高いとみられます。
• Aaveは分散型レンディング分野で首位を確保し、Horizonプラットフォームの提供により、機関投資家向けRWA担保融資市場へと進出。DeFiと伝統金融の橋渡し役としての役割を一層強化しています。
• BIOはV2アップグレードとエコシステム拡大を背景にDeSci分野で急成長。トークンの時価総額およびステーキング量が急増し、オンチェーン資本の流入も加速するなど、分散型科学研究のリーダーとして高いポテンシャルを示しています。

オンチェーンインサイト概要

オンチェーンアクティビティ・資本フローの概観

オンチェーン全体の資本フロー解析に加え、各ブロックチェーンエコシステムでの実需およびエンゲージメント水準を評価するため、日次トランザクション量、日次ガス手数料、日次アクティブアドレス数、クロスチェーンブリッジの純流入出などの主要アクティビティ指標を選定しています。これらの指標によってユーザー行動、ネットワーク利用度、資産流動性を把握でき、単なる資本流出入の観察だけでなく、オンチェーンの根源的な変化をより包括的に捉えられます。資本移動が実需や成長と伴っているかを見極め、持続的な発展が期待できるネットワークの選別に役立ちます。

トランザクション量分析：Ethereumが新高値、Solanaが依然トップ

Artemisのデータによれば、2025年8月31日時点でSolanaは主要パブリックチェーンの中でトップとなる月間290億件超のトランザクション、日次平均9,000万～1億件を誇り、月末の一時的な変動をものともせず、エコシステムの基盤の強さと高頻度モデルの優位性を示しました。【1】

一方、Ethereumのオンチェーントランザクション量は2カ月連続で新高値となり、5,177万件を突破。過去4年で最高水準に達し、L2への分散が進む中でも本体ネットワークの活況を維持しています。高トランザクション価値・ガス手数料が制約要素ですが、メインネットとL2の相乗効果の高まりにより、健全な取引構造を示しています。

DefiLlamaによると、2025年8月のEthereum系DEX取引量は過去最高の1,401億ドル。総預かり資産（TVL）は9,258億ドルで、2021年ピーク比約17%低い水準ですが、取引量とアクティブユーザーの増加は資本効率の改善と流動性参加の活発化、「取引アクティビティがTVL回復を上回る」トレンドを示唆します。

全体として、Solanaは高頻度・高エンゲージメントモデルでオンチェーントランザクション活動をリードし続け、BaseはL2トランザクションハブとして存在感を増し、Ethereumはメインネット×L2協調によるレジリエンスと価値収容力を体現しています。オンチェーンの取引エコシステムは「高頻度チェーン」と「価値重視チェーン」への分化が進んでいます。【2】

アクティブアドレス分析：Solanaが首位、Ethereumが新高値

Artemisによれば、2025年8月31日時点でEthereumメインネットの日次アクティブアドレスは約54万3,000件、月間アクティブアドレスは1,600万件超で史上最高を記録し、ユーザーベースの拡大傾向を示しています。

Solanaは日次アクティブユーザー数で358万7,000件と圧倒的なトップとなり、定着率・高頻度シナリオでの強みを発揮。Baseは120万6,000件で次点となり、アプリ誘致・エコシステム成長の成果が表れています。【3】

全体として、Solanaがユーザー活動で主導し、Baseが急速に台頭、Ethereumは「メインネット＋L2」構造でより広範なエコシステムを構築しつつあります。ブロックチェーンごとの役割分化が進み「高頻度ユーザーチェーン」と「価値収容チェーン」という構造が明確化しています。

オンチェーン手数料収入分析：Ethereumが高価値ユースケースで独走、Solanaも堅調

Artemisのデータによると、2025年8月のEthereumのオンチェーン手数料総額は約6,500万ドルで、若干前月を下回るものの依然圧倒的な水準。月中には単日500万ドル近いピークを記録し、DEX取引や新規プロジェクト導入の旺盛な需要を映し出しました。【4】

Solanaも日次手数料収入100万～150万ドルの範囲で安定し、Ethereumに次ぐ2位。超低手数料と膨大なトランザクションボリュームによって、高頻度ユースケース向け商用基盤を築いています。

全体として、Ethereumが手数料収入面で明確な優位性を持ち、Solanaが高頻度駆動の取引量で追随、Baseもネイティブエコシステムの支えで堅調な伸びを見せています。手数料収入の分化は、チェーンごとの戦略的な重心（価値型vs頻度型）を反映しています。

パブリックチェーン資本フロー分析：Ethereumが主導、Polygonは最大の流出

Artemisによると、Ethereumは20億ドル超の純資本流入で機関導入・エコシステム成熟度の観点でも群を抜くリーダーです。【5】FRBのハト派的な発言や機関投資によるETH価格上昇が後押しし、ETH価格は4,956ドル、時価総額は5,800億ドル超に到達。Ethereum ETFのAUM合計は305億ドル、単月純流入も28億ドルという記録的な水準です。【6】

エコシステム拡大も著しく、RobinhoodやOndo Financeでの株式トークン取引、USDCの月間送金額7,483億ドル、DeFiプロトコルPendleのTVL100億ドル超など、Ethereumの規制金融およびDeFi基盤としての存在感はますます増しています。【7】

Ethereum以外では、WorldChainが9,880万ドル、Solanaが7,270万ドルの純流入を記録しており、新興・既存ネットワーク両面で資本吸引力を示しています。

一方、以下のように多くの主力チェーンで大規模な資本流出が発生：

• Polygon PoSは10億ドル超の純流出。
• UnichainとArbitrumはそれぞれ4億9,000万ドルと2億3,000万ドルの流出。
• Baseも1億9,000万ドルの流出を記録。

これはL2・サイドチェーン全体でのバリュエーション・市場心理の再調整を示します。

全体として、資本フローの集約が顕著になり、Ethereumの機関展開・エコシステム発展が一段と強化されています。WorldChainやSolanaのような新興チェーンにもエコシステム積層効果による資本流入が続く一方、初期の話題先行型L2やサイドチェーンは、市場ホットスポットの変化と流動性競争の激化で圧迫されています。

主要ビットコイン指標分析

Bitcoinは2025年8月に12万4,000ドルの史上最高値を記録した後、調整フェーズに入りました。歴史的高値後は上昇モメンタムが大きく減速し、高値圏での持合い・部分的下落の局面へ。このコア資産に対するオンチェーン構造指標も、資本行動や市場構造の深層変化を映し出し始めています。資本流入減少・需要モメンタム低下の中、供給分布・投資家ポジショニングが今後のトレンドを占う重要指標となります。

現行高値圏でのサポート論理・リスク推移を包括的に評価するため、本稿では3つの主要オンチェーン指標に着目：

• 実現時価総額＆純ポジション変動 ― 資本流入出を把握
• ボラティリティ調整済み実現損益 ― 利確圧力と市場吸収力
• コストベース分布＆相対的未実現損失 ― サポート帯・下方リスク評価

これらの複合指標によって、現高値圏での資本分布・市場吸収・ストレス水準を展望し、今後の想定価格推移予測に役立てます。

ビットコイン資本流入鈍化と高値需要の弱体化

Glassnodeデータでは、Bitcoinの実現時価総額は12万4,000ドル突破後も伸長したものの、資本流入ペースは明らかに減速。2024年3月・12月の過去高値では資本流入が目立ったものの、今回の高値ブレイク時は緑色棒グラフが低水準にとどまり、新たな資本流入や高値圏での投資家意欲の低迷が顕著です。これは需要モメンタムの鈍化と流動性サポートの限定性を示しています。【8】

また、ボラティリティ調整済み純実現損益（7日平均）指標では、過去の高値では強い利確圧力が生じてきましたが、今回（2025年8月の12万4,000ドル到達時）は利確規模が限定的かつ資本流出も抑制的で、前回ATH時と比べて非常に穏やかな推移です。【9】

これは投資家のホールド志向の高まりと売り圧力の低減、市場構造の強靭化を示しています。

全体として、短期的な資本流入減が上昇余地の制限要因となるものの、強い利確が出ないことで長めの持合い推移を支え、急激な反転リスクを抑制しています。

ビットコイン・コストベース集中が主要サポート帯を強化

Glassnodeコストベースヒートマップによると、Bitcoinの供給は9万3,000～11万ドルの価格帯に高い密度で蓄積され、2024年12月以降このゾーンで安定して形成されています。これが現サイクルの主なサポート帯になっています。【10】

直近の12万4,000ドルからの調整局面後も、BTC価格はこの高密度帯の上に位置しており、需要吸収力の強さを示します。11万ドル以上は供給希薄な“流動性ギャップ”が存在し、価格がサポート・レジスタンスを欠き変動しやすい構造です。

現時点では11万1,000ドル前後を推移。深い押し目があっても、この高密度サポート帯が下支えとなる可能性が高く、維持されれば持続的な蓄積トレンド・反転基調を生む可能性もあります。

全体として、9万3,000～11万ドル帯への供給集中が底値形成を示唆し、BTCが重要なサポートエリアで推移していることが浮き彫りとなっています。

未実現損失は依然低水準、市場ストレスも抑制

GlassnodeのRelative Unrealized Loss指標は2023年の弱気相場時に急上昇していましたが、2023年末以降は急速に低下し、2024～2025年も-0.5シグマ以下で推移しています。【11】

現在は同指標が0.5%前後にとどまり、2018～2020年、2022～2023年のベアマーケット極値（30%超）とは対照的です。12万4,000ドルからの押し目でも市場ストレスは限定的であり、含み損を抱えた投資家割合も低水準です。

全体として、市場は過去サイクルに見られたパニック的局面とは程遠く、投資家のポジショニングも健全な状態、今回の調整はサイクル途中の一時的推移であり、トレンド反転の兆しではないことを示します。

注目プロジェクト・トークン動向

オンチェーンデータから、資本とユーザーは強固なインタラクション基盤と厚みのあるアプリ層のエコシステムへ集中を強めています。物語性と技術革新を併せ持つプロジェクトが投資家の新たな注目点となっており、ここでは直近でパフォーマンスの高いプロジェクト・トークンの動向と背景要因、今後の示唆を分析します。

注目プロジェクトデータ概要

Aave

Aaveはスマートコントラクトを活用した分散型レンディングプラットフォームで、ユーザーが中間業者を介さず直接貸付・借入が可能です。革新的なレンディング商品を持ち、複数暗号資産・Layer2対応、高機能の担保型ローン・フラッシュローン、資本保護のSafety Module等を提供しています。

Aave V4では統合流動性レイヤー、ソフト金利制御など新機能が導入予定で、GHOによる手数料徴収やAave V4との統合アプリチェーン構想も計画されています。

DefiLlama参照でAaveのTVL（預かり資産総額）は411億ドル超、過去最高記録となりました。【12】借入残高289億ドルを含め、管理資本総額は700億ドル超、米国上位37行に相当します（上位1.7%）【13】。創業者Stani KulechovはAaveがFRBを介さず機関投資家の利回り機会も創出できるオープン金融ネットワークであることを強調し、DeFiのTradFi代替可能性を訴求しています。

AaveはDeFiレンディング市場シェアで約50%、2位Morphoの約6倍を誇り、高いセキュリティと安定性への信認からユーザー・機関資本が集中しています。

Aave LabsはHorizonプラットフォームを始動、機関投資家向けにトークン化RWA（実世界資産）担保のステーブルコインローンを提供。初期は認定機関がトークン化国債・暗号資産ファンド等を担保にUSDC、RLUSD、GHOを借入可能で、Superstateの短期国債ファンド、CircleのYield Fund、CentrifugeのJanus Henderson債券が担保対象となります。【14】

Horizonの始動でAaveは機関向けRWAファイナンス本格参入となり、国債等従来資産のDeFi担保化によるステーブルコイン需要増・流動性・利回り管理強化で機関参入を加速します。

このアプローチはステーブルコイン・RWA両領域の需要・流動性増加と、DeFi×TradFiの融合深化を後押しします。

全体として、Aaveは分散型レンディングのトップ地位を維持しつつ、Institutionalサービスの革新で戦略的先見性を明確化。規制明確化や担保対象拡大でHorizonが機関のDeFi参入ゲートウェイとなり、Aaveはグローバル金融インフラの中核的存在へと進化しています。

注目トークンデータ概要

$BIO

$BIOはBio Protocolのネイティブトークンで、分散型科学（DeSci）特化のブロックチェーンプロジェクト。オンチェーンガバナンス（報酬）で研究者・患者・投資家によるオープンな科学協働ネットワーク実現を目指します。

BIOトークンはBioDAOガバナンス、プロジェクト育成、IP収益分配、投票権・リワード獲得のためのステーキング等に利用されます。

Bio ProtocolはIPのトークン化や研究タスクインセンティブ、インキュベーターフレームワークで科学的成果のオンチェーン証券化と商業化を推進し、DeSci分野を代表する存在です。

V2ローンチに伴い、Launchpad、ステーキングポイント、流動性エンジンを導入。初週でステーキングBIO総額が1億枚を超え、トークン時価総額も2億ドルに達し、DeSci分野への投資家関心が再燃しています。【15】。BIO価格は8月18日の0.10ドルから8月24日の0.315ドルに上昇、1週間で約200%の値上がりを達成し、8月のトップオンチェーン資産となりました。

エコシステム面では流動性手数料収入400万ドル超、DeFiプロトコルとの連携やBIO専用レンディング市場の開設も準備中です。

また、研究工程自動化の分散型科学エージェント「Bio Copilot」リリースも予定しており、創薬・臨床・資金配分などを自動処理、DeSci分野の高頻度・知能的イテレーションを推進します。

オンチェーンデータでも資本流入が加速しており、Dune AnalyticsによればBio ProtocolのTVLは2,200万ドル超・7日間で110%以上増加。

アナリストは長期ロックポジション比率増がBIOの持続的上昇動力となり得る一方、短期ポジション優勢時は一時的売り圧力にも注意が必要と指摘。長期資本流入が続けば、BIOは新たな強気サイクルに入る可能性もあります。【16】

全体として、Bio Protocolは的確なポジショニングと継続的イノベーションでDeSci分野のリーダーへ。V2アップグレードや流動性・エコシステム拡大による強いオンチェーン実績と市場吸引力で資本・コミュニティの厚い参加を実現しています。

「Bio Copilot」等による新展開も控え、科学研究のオンチェーン化・自動分散型R&Dの進展が見込まれます。

資本流入・ステーキング構造の最適化が進めば、Bio ProtocolはDeSci分野のトップであり続け、科学イノベーションとオンチェーンファイナンスを結ぶ架け橋となるでしょう。

結論

2025年8月、オンチェーン活動・資本移動の分岐が一層鮮明となりました。Solanaは月間2,900億件超の取引数で取引量ランキング首位、高頻度インタラクションで圧倒的な存在感を示しました。Ethereumはメインネット取引量で新高値を連続更新し、手数料収入・純資本流入で他チェーンを引き離し、高付加価値・機関投資ネットワークとしての地位を確立。Baseはアクティブアドレス100万件超とL2エコシステムでの影響力を拡大しています。

資本面ではEthereumが20億ドルを超える純流入を記録し、ETH価格・ETF運用資産（AUM）ともに過去最高を更新。WorldChainやSolanaも資本吸引力で上位入り。対照的にPolygon、Unichainなど複数のサイドチェーン・L2は資本流出圧力に直面し、オンチェーン環境は「勝者独占」構造への移行が進行中です。

注目プロジェクトとしてはAaveとBio Protocolの両者が挙げられます。

• DeFiレンディング首位のAaveはTVL411億ドル・管理資本700億ドル超を達成。Aave V4やHorizonプラットフォームにより、機関向けRWA担保融資を加速させ、DeFiと伝統金融の接点強化へ。
• Bio ProtocolはV2ローンチ後、時価総額2億ドル・トークン価格200%上昇を実現し、AI科学研究支援「Bio Copilot」計画でDeSci分野の高い成長力を印象付けました。
  
  
  参考文献：

1. Artemis, https://app.artemisanalytics.com/chains
2. DefiLlama, https://defillama.com/chain/ethereum?activeAddresses=false&tvl=false&groupBy=monthly&dexsVolume=true
3. Artemis, https://app.artemisanalytics.com/chains
4. Artemis, https://app.artemisanalytics.com/chains
5. Artemis, https://app.artemisanalytics.com/flows
6. CoinGecko, https://www.coingecko.com/en/treasuries/ethereum
7. DefiLlama, https://defillama.com/protocol/pendle
8. Glassnode, https://studio.glassnode.com/charts/ba1ec93d-85f4-41fe-5606-798a2f30013a?a=BTC
9. Glassnode, https://studio.glassnode.com/charts/22ef95fa-bed1-4a18-5e56-a74093870d1a?a=BTC
10. Glassnode, https://studio.glassnode.com/charts/indicators.CostBasisDistributionHeatmap?a=BTC&mScl=log&pScl=log&period=1y&resolution=24h&s=1727519376&u=1756166400&zoom=
11. Glassnode, https://studio.glassnode.com/charts/e710c5a0-3f26-4e8b-7fa2-28ef87c92b73
12. DefiLlama, https://defillama.com/protocol/aave?events=false&borrowed_tvl=true
13. Aaverank, https://aaverank.com/
14. X, https://x.com/defisebs/status/1960790694509076811
15. CoinGecko, https://www.coingecko.com/en/coins/bio-protocol
16. Dune, https://dune.com/tk-research/bio-launchpad

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